【2026年4月更新】
「扶養の範囲で働くか?扶養から外れて働くか?」
その判断のポイントとなるのが「年収の壁」です。
パート・アルバイトとして働くうえで、基本的なルールは押さえておきたいところ。
ですが、もともと複雑な制度であることに加え、
度重なる税制改正によってルールが細かく変わり、混乱してしまう方も少なくありません。
そこで今回は、2026年4月に更新された最新ルールをもとに、年収の壁の基本をわかりやすく解説します。
働き方を考えるときのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください!
年収の壁は「税金の壁」と「社会保険の壁」の2種類ある
年収の壁とは、ある一定の収入を超えると、税金や社会保険料を支払わなければならない「年収の目安」のことです。
大きく分けると、「税金の壁」と「社会保険の壁」の2つがあります。この2つは、管轄している省庁が違い、制度も全くの別もの。
年収の壁が複雑に感じるのは、税金の話と社会保険の話が混ざりやすいからです。

▶️多くの方が気にすべきは「社会保険の壁」
先にお伝えしておくと、多くの方が気にすべきなのは「社会保険の壁を超えるかどうか」です。
税金の壁は、少し超えたからといって負担が急に増えるわけではありません。
一方で、社会保険の壁は、少しでも超えると給与の約15%〜30%の社会保険料を負担することになります。
そのことを踏まえ、まずはそれぞれの壁について確認していきましょう。
◆税金の壁:超えると税金の支払いが発生する
税金に関わる壁、119万円・178万円・169万円・207万円の壁について、2026年4月以降の新ルールをもとに紹介します。
【119万円の壁】住民税が発生する年収のライン
119万円の壁とは、住民税が発生する年収の目安のことです。
2025年までは110万円の壁でしたが、2026年4月から119万円の壁に引き上げられました。
およそ年収119万円を超えると、超えた部分に住民税が課税されます。
ここで「およそ」としているのは、住民税が課税される基準が自治体によって112万円〜119万円と少しずつ異なるからです。
住んでいる地域によって、住民税の壁のラインが変わることは、覚えておきましょう。
【178万円の壁】所得税が発生する年収のライン
年収178万円の壁は、所得税が発生する年収の目安です。
2025年までは160万円の壁でしたが、2026年4月から178万円の壁に引き上げられました。
年収178万円を超えた部分に対して、年収に応じて約5%〜45%の所得税が課税されます。
ここで、年収が179万円だった場合の所得税を見てみましょう。
| 【年収179万円の場合の所得税】
1万円(年収の壁178万円を超えた分)× 所得税率5% = 約500円(年間) |
住民税の壁と同じく、壁を少し超えたからと言って、一気に大きな負担が増えるわけではありません。
そのため、所得税の178万円の壁も、必要以上に心配しすぎなくて大丈夫です。
【169万円・207万円の壁】扶養する側の配偶者特別控除に関わる壁
169万円・207万円の壁は、配偶者特別控除に関わる年収の目安です。
配偶者特別控除とは、扶養される配偶者の年収に応じて、扶養する側の税負担が軽くなる制度です。

配偶者の年収が169万円を超えると、扶養する側が受けられる配偶者特別控除は少しずつ減っていきます。
つまり、扶養する側の税負担は少しずつ増えていくことになります。
そして、207万円を超えると、この控除は受けられなくなります。
| 169万円の壁:控除額が減り始める年収のライン
207万円の壁:控除がなくなる年収のライン |
ただし、169万円を少し超えたからといって、すぐに控除がなくなるわけではなく、段階的に減っていく仕組みになっています。
たとえば、パートで働く妻を扶養する夫が年収600万円だった場合、妻の年収が169万円以内であれば、夫は満額38万円の配偶者特別控除を利用できます。
そうすると、夫の税金は約7万円安くなります。
なお、扶養する側の年収が900万円を超える場合、配偶者特別控除の金額が変わったり、対象外になる場合もあります。
◆社会保険の壁:超えると社会保険料の支払いが発生する
社会保険の壁には、106万円の壁と130万円の壁があります。
どちらの壁が自分に関係するかは、勤務先の条件や働き方によって変わります。
ただし、106万円の壁は、今後は実質的に「週20時間の壁」として考えたほうが分かりやすくなっていきます。
【106万円の壁】勤務先の条件によって社会保険の加入対象になる
106万円壁は、自分のパート先の社会保険に加入する義務が発生する年収の目安を指していました。
条件は次のとおりです。

106万円の壁」という言葉は、このうち「賃金が月額8.8万円以上」という条件からきています。
▶︎106万円の壁は「週20時間の壁」へ!
ただ、最低賃金が上がってきたことで、「月額8.8万円以上」という条件は実質的に意味のない条件になってしまっており、2026年10月に法律上も撤廃される予定です。
また、「従業員51人以上の会社」という企業規模の条件も、2027年以降、段階的に縮小される予定です。
そのため、今後は「106万円の壁」よりも、「週20時間の壁」がより大きな基準になっていきます。
【130万円の壁】家族の扶養から外れ、自分で社会保険に加入する必要がある
会社の規模や雇用形態に関係なく、年収130万円を超えると、家族の扶養から外れます。

たとえば、次のような方が対象です。
| ・106万円の壁(週20時間の壁)に当てはまらなかった方
・従業員が50人以下の企業に勤めている方 ・複数のパート先で働いている方 ・個人事業をしている方 |
このような方が年収130万円を超えると、社会保険の扶養から外れ、勤務先の社会保険に加入する、または自分で国民年金、国民健康保険に加入する必要があります。
なお、「年収130万円」には、交通費、失業手当、副業収入なども含まれます。
▶︎2026年4月から新しくなった「年収130万円」の判定基準
なお、130万円の壁の判定方法は、2026年4月から少し見直されました。
これまでは「今後1年間の収入見込みが130万円以上か」で判断していました。
ですが、これからは「雇用契約書や労働条件通知書の内容が130万円以上かどうか」に変わります。
そのため、契約書に明確な記載がなく、あらかじめ金額を見込みにくい残業代などは、
原則として年収130万円に含まれません。
たとえば、一時的な人手不足などで臨時に発生した残業代については、
それによって130万円を超えても、すぐに扶養から外れるとは限らないことになります。
ただし、130万円をどの程度超えてもよいかについては、具体的な金額がはっきり決まっているわけではありません。
「社会通念上妥当な範囲」とされており、最終的には、扶養する側が加入している健康保険組合の判断によります。
⚠️60歳以上の方・障害のある方は「180万円の壁」が当てはまる場合も
60歳以上の方・障害のある方で、以下の条件に当てはまる場合、130万円の壁ではなく「180万円の壁」が適用されます。
【年収180万円の壁が適用される条件】
| ✅扶養されている側が60歳以上、または障害のある方
✅年間収入が180万円未満、かつ配偶者の年収の2分の1未満 |
130万円の壁より50万円上限が高く設定されているため、
60歳以上の方・障害者の方は、より長く扶養内で働ける場合があります。
ただし、「年収180万円」にはパートの給与だけでなく、障害年金や遺族年金なども含まれるので注意しましょう。
「年収の壁」を踏まえて働き方を考えるときのポイント
「年収の壁」に関わることで、とくに押さえておくとよいポイントをご紹介します。
①「税金の壁」は少し超えても急に負担が大きくなるわけではない
税金に関わる119万円・178万円・169万円・207万円の壁は、少し超えたからといって、急に大きな負担が発生するわけではありません。
たとえば、住民税や所得税は、基準を超えた分に対してかかる仕組みです。
そのため、「少し超えただけで大きく損をしてしまうのでは」と、必要以上に心配しすぎなくても大丈夫です。
まずは、それぞれの壁が何に関わるものなのかを知り、自分に関係するラインを落ち着いて確認していくことが大切です。
②「社会保険の壁」は、手取りへの影響が大きい
一方で、社会保険に関わる106万円・130万円の壁は、税金の壁に比べて手取りへの影響が大きくなりやすいです。
社会保険に加入すると、健康保険料や厚生年金保険料などの負担が発生するため、年収が増えても、手取りは思ったほど増えないことがあります。
そのため、扶養の範囲で働くかどうかを考えるときは、税金の壁よりも、社会保険の壁を意識することが大切です。
③社会保険に加入するメリットもある
社会保険の壁を超えると、手取りが減ることに目が向きがちですが、加入するメリットもあります。
たとえば、社会保険に加入すると、将来受け取る年金額が増えます。病気やけがで働けなくなったときに受け取れる傷病手当などの保障も増えます。
また、今後は社会保険の加入対象が広がっていく流れもあるため、扶養の範囲内にこだわりすぎず、働き方を柔軟に考えることも大切です。
④夫が「家族手当」や「扶養手当」を受け取っている場合は注意
夫が会社から「家族手当」や「扶養手当」を受け取っている場合、その条件にも注意が必要です。
これらの手当は、会社によって支給条件が違い、「配偶者の年収が103万円未満であること」など、細かい条件が設けられているケースもあります。
そのため、扶養の範囲内で働くかどうかを考えるときは、税金や社会保険のルールだけでなく、夫の勤務先の制度もあわせて確認しておくと安心です。
⑤年収の壁のルールは、時代とともに変化する
年収の壁のルールは、時代に合わせて見直されていきます。
実際に、税金に関する壁の金額はこれまでにも何度も変更されており、社会保険や雇用保険についても、今後のルール変更が予定されているものがあります。
そのため、「今の制度がずっと続く」と思わず、最新の情報を確認しながら、その時々で自分に合った働き方を考えていくことが大切です。
まとめ|自分や家族にとって最適な働き方を考えてみよう!
「扶養の範囲内で働くか、扶養から外れて働くか」という選択に、正解・不正解はありません。
大切なのは、年収の壁の正しい知識を身につけて、自分のライフスタイルや家計にとって最適な働き方を選択することです。
✅生活費はどのくらい確保したいか?
✅将来の年金や保障をどれくらい重視するか?
✅現在のライフスタイルに合った働き方は?
上記のようなことを、一度立ち止まって考えてみましょう。
正しい知識があれば、自分に合った働き方のヒントがきっと見つかります。
この記事が、みなさんのお役に立てれば幸いです。